貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
「1年たっても変わらねぇ。嬢ちゃんは面白い。それから、サラはますますいい女になったな」
 ほえ?
 バーンの今の言葉……。
 サラの顔を見ると、ぷぅーっと頬っぺた膨らませながらバーンを睨んでいます。
「相変わらず、バーンは言いたい放題ですね」
「はははははっ。そう、俺、思ったことなんでも口にしちゃうタイプ」
 ほ、ほえええっ!
「サラはい女になったな」
「なっ、なっ、褒めたって、何も出ませんからっ!」
 16歳の春の旅。大人の恋を見ました。
 はうー。旅の途中、サラとバーン。結婚の約束をしたようです。
 おめでたいのです。涙で目が霞ます。うるうる。
「恋っていいですね」
 あ、でもって、今度の金の匂いは……スパイシー。
 胡椒というらしいです。また、食べ物ですから、調理人に頑張ってもらわなければ。むふふふ。

 でもって、また途中で帰りますよ。
「恋っていいですね」
 別れのタイム。
 なんだかサラとドーンがお互い見つめ合っておりましてですね。
「恋、したいの?」
 エイト君が私の顔を覗き込みました。

 

 ドキンと、胸が大きく跳ねます。
 恋……。
「私、恋がしたいのかな?」
 エイト君と視線が合う。
「誰と?」
 エイト君の顔との距離は30センチもない。
 近い、近い。
 エイト君の瞳の中に、私の姿がみえる。
 それから、エイト君のすっかり子供から男の人になったにおいがかすかに感じられます。
 サラにエイト君っていい匂いするよねって言ったら、首をかしげたられた。そうですか?と。
 いやいや、あんなにいい匂いでいつまでもくんかくんかしてたいのに気が付かないの?
 サラが言うには男の匂いなんて、汗臭いとか泥臭いとか酒臭いとかニンニク臭いとかそもそも風呂入れよ臭い、とか、臭い以外の匂いなどない!
 って。え、マジですか。
 エイト君の匂いはそんなんじゃなくって、安心する匂いっていうか……。
 そういえば、同級生の男子が「なんか足の指とかへそとか臭いけどつい匂いかいじゃうよなぁ」とか言ってた。臭くても嗅ぎたくなる匂いも世の中にはある……。
 って、エイト君は臭くないですけどね。
「どうして、すぐに答えが出てこないの?」
 答え?
 ああ、そういえば、誰と恋したいかって聞かれたんだ。
 恋……。
 私には婚約者がいる。
 この国の第一王子だ。
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