貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
「いいえ、違いますわ。国母になると決意したからには、この国のことをもっと知っておきたいとおもいまして」
 金になりそうなもの探す旅にとはさすがに言えない。
「ちょうど、中等部を卒業して、2か月間の長い休みに入りますでしょう?その間に国を見て回りたいと思いますの」
「あ、ああ、そういう……うむ、分かった、では、手配しよう……」
 手配?

 旅立ちの朝。
「おねーさま、おはようございます」
 ニコニコと目の前で少年が笑っている。
 ま、まぶしい!
 朝日に少年の金の髪が輝いて丸で後光がさしているかのようにっ。
 少年の後ろには、男性が立っている。親子かな?これまた、金髪がまぶしいっ。
「えっと、初めまして、リアーナです」
 とりあえず、挨拶挨拶。
「リアーナおねーさま、僕のことはエイトと呼んでください」
「おねーさまというのは……えっと」
 後ろの男性がぺこりと頭を下げた。
「私は、お二人の護衛をさせていただくドーンです」
「ご、護衛?」
 少年も男の人も身なりは私と似たり寄ったりだ。
 貴族の旅だとばれないように平民の平均的な服。一緒に旅する侍女のサラが用意してくれたもの。……サラと二人で旅をするつもりだったんだけど……。
「ご、護衛がつくなんて聞いてないです……」
 思わずガタガタと震える。
「サラ、護衛って、護衛ってどうしよう」
「おねーさま、もしかして、男性恐怖症か何かですか?でしたら、護衛は女性に変えてもらいますよ?」
 少年が震えだした私の顔を覗き込んだ。
 って、さっきは逆光で見えなかったけど、天使かよっ!ふわっふわの金髪に、大きな緑色の瞳。真っ白な肌にぷっくりとまだ幼さを残したほっぺはももいろで、てーんーしー、天使が舞い降りました!
「いえ、あの、護衛を雇えばお金が……お金がかかってしまいますよね……私ったら、全く考えなしで……まさか、私、お金を浪費させるようなことを……」
 護衛って雇うといくらかかるんだろう。サラはもともと我が家で働いている侍女なので、ついてきてもらってもついてきてもらわなくてもお金は変わらないんだけど……。
「ぷっ。はははははっ」
 ふえ?
 大きな笑い声にびくりと体をゆする。
「これは愉快だ。護衛を雇う金の心配をするとは、ははは。公爵令嬢ともあろうものが、うはははっ」
 お腹を抱えて護衛だと言ったドーンが笑っている。
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