貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
 サラのいやそうな言葉に、再びドーンが涙目になった。
「ドーン、お前、黙ってればいい男なのにって侍女たちの噂は伊達じゃないな。くくくっ」
 なんだかよく分からないけれど、とりあえず……。
「楽しい旅になりそう。ありがとう、一緒に行ってくれて」
 エイト君ににこっと笑いかける。
「あ、う、えっと、僕の方こそ、一緒に行かせてくれて、ありがとう」
 天使が下を向いた。

 がたごとがたごと。
 馬車は進むよどこまでも。
 幌馬車の後ろから景色を見る。
 うーん、ガタガタの道。左右の景色は山。
 山。
 えーっと、山。ちょこっと耕作地で、小さな村がある。
 またもや山。
 あ、はげ山。ふもとに村。あそこが宝石を採掘しているところだろうか。
 山。
 山。
 ……。本当に、金目のものない国だ。
 って、金目のものって何だろう。
 黄金の山?そんなものがあれば苦労しないよねぇ。
 他の山から宝石は産出しないのかな?
 って、結局宝石頼みってだけではまた同じ問題にぶち当たっちゃうんだよね……。
 山を切り開いて畑にすることは無理なのかな?
 山で育てられるものだってあるんじゃない?そもそも、あんなに木がいっぱい生い茂ってるんだもん。
 木?
 木?
「ねぇ、サラ、木って何に使えるかな?」
「木ですか?それはもう、いろいろと使えますよ。日々、煮炊きに使っていますし、家や家具や食器、生活に必要な品物の半分は木でできているのではないでしょうか?」
 すごい!
 そういわれれば、屋敷のあちこちは木だ。ベッドやタンスも木だった。椅子も机も。
 冬の暖炉で燃やすのも木。木ってすごい。
「木は売れないかしら?」
 思わず口から洩れた言葉に、はっと口を押える。
 やばいやばい。
 うちの国が貧乏ってことはトップシークレットなんだよね?
「売る?」
 エイト君が首を傾げる。
「あ、えーっと、宝石以外に、近隣諸国と取引できるものがあれば、えっと、もっと、その、国が豊かになるかな?なんて……」
 ごまかせた?
「そうですねぇ。近隣諸国も、我が国ほどではないにしろ緑豊かな土地です。木は他国からわざわざ輸送してまで入手する必要はないでしょうね」
 あー、そうか。
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