貧乏国の悪役令嬢、金儲けに必死になってたら婚約破棄されました【短編】
「あ、はは、駄目だ、おもしろすぎるリアーナ」
「笑いすぎだよ、ドーン、姉さんに失礼だろう!」
 って、その言葉が失礼ですよ。エイト君よ。
 笑いすぎってことは、ちょっと笑うくらいならいいというか、ちょっとは笑っちゃっても仕方がないって思ってるってことでしょ?
 何よ、どこがおかしいっていうのっ!むきーっ!
 結局、街道が見える辺りをうろうろと木の匂いを嗅いで移動し続けたけど、香木はなかった。
 ……ずっとドーンは笑ってたよ。失礼しちゃうっ。
 私は国のために真剣なのにっ!

 街に着きました。
「ではちょっと木こりを探してきます」
 街に着くなり、ドーンは人探しに出かけた。
「木こりならいろいろな木を知っていますから」
 と、エイト君……エイトが私の顔を見た。
 う、うううう、木こりに、香木を見せて「こんな木をしらないか?」と尋ねるつもりじゃ……。
 そんでもって「もし見つけたら連絡をしてくれ」と頼むつもりじゃ……。
 ぐ、ぐおうっ!
 ああああ、何てこと!何てこと!
 その手があったか!
 そりゃ、初めからそのつもりなら、森の中を駆け回り、木の匂いを嗅いで回った私の姿はさぞ滑稽に……。
 ぐぬぬ。ドーンめ!教えてくれないエイトも同罪じゃ。うぐぐぐぐ。
「サラ!負けてられないわ!私たちも、街の人たちに聞きに行くのよっ!」

 と、ふらふらといい匂いのするお店にたどり着きました。
 あれ?おかしいな。足が勝手に。
 いや、お腹もすいてたし。
「いらっしゃい」
 サラと二人、案内されて席に座る。
 って、つい店に入っちゃったけど、高かったらどうしよう。
「あの、一番安いメニューは何ですか?」
「そうね、一番安いのは飲み物類よ。食べ物だとランチが銅貨3枚のものと5枚のものがあるわ」
 銅貨3枚でランチ!パンにスーぷみたいなものかな。十分です。
「じゃぁ、銅貨3枚のランチを2つお願いしますっ!」
 大丈夫、無駄遣いじゃない。無駄遣いじゃない。
 すぐにランチが運ばれてきた。
 そう、これは聞き取りをするための必要経費。
 ランチを運んでくれたウエイトレスさんに話しかけます。
「あの、ちょっと聞きたいんだけれど。いい匂いのする木を知りませんか?もしくは、木に詳しい人を知りませんか?」
「ふふ、いい匂いの木ね。ほら、それに使ってあるわ」
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