カウントダウン
「柏木愛美……。

お前には決して許されない三つの罪がある」


額から血を流し、血色の悪い顔をした忍がまばたき一つしない目で私をじっとにらんでいた。


「お前の罪、一つ目……。

私に陰キャ眼鏡というあだ名をつけて、クラス中に広めたこと」


忍が着ている血まみれのセーラー服は忍が事故死したときに着ていたものに違いなかった。


忍はある日の夜、見通しの良い国道でトラックにひかれて死んだのだ。


忍の死は自殺だというウワサが立ったが、いまだに本当のことは誰にもわかっていなかった。


「お前の罪、二つ目……。

自分が誰よりもかわいいと信じきり、ブスな私を差別したこと」


いつもおどおどしていて、私に何を言われても言い返せなかった忍なのに、今の忍はその瞳に恨みと憎しみをにじませ、それを隠そうともしていなかった。


私はクラスの底辺にいた忍といつも男子からチヤホヤされている自分の立場が逆転するなんて、絶対にあり得ないことだと思っていた。


それなのに、私は今、忍の悪霊に追い詰められて、怯えていた。


自分の力だけではこの危機を回避できない状況の中で、私は雄太が早く来てくれることを願っていた。
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