カウントダウン
「来ないで……」


私はつぶやくようにそう言ったが、私のその言葉が忍の気持ちを変えることは決してない。


私と忍が和解する言葉はもうこの世に存在などしないのだ。


忍が迫ってくるスピードが徐々に上がってきて、私は慌てキッチンへと逃げ込んだ。


そしてキッチンのドアを閉め、両手でそのドアを押さえると、ここに忍が入ってこないことだけを心から願っていた。


「私はずっと想像していた……」


忍が不気味な声でそう言ったあと、キッチンのドアがものすごい衝撃で叩かれた。


そしてその衝撃で穴が開いたキッチンのドアから忍の不気味な顔が見えていた。


「お前のそのキレイな顔が誰よりも醜くなればいいのにって……。

私はお前にもわからせたい。

醜い顔をバカにされる心の痛みを……」


忍はそう言った後、血走った目で私をにらみながら、何度も何度もキッチンのドアを叩いていた。


そして忍がキッチンのドアを叩く度にドアに開いた穴が大きくなっていき、私の心の中で不安と恐怖が広がっていった。


私は生きた心地もしないままに、必死に壊れたドアを押さえていたが、ドアに開いた穴から忍の手がスッと伸びてきたとき、思わず悲鳴を上げながらドアから体を遠ざけていた。
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