カウントダウン
「私はお前の顔が大嫌い。

その顔と私の顔を比べると憂鬱な気持ちになってくるから」


忍はそう言いながら、右手の人差し指を真っ直ぐに私の顔に向けていた。


だけど、私の顔がキレイでみんなからチヤホヤされていたことと、忍の顔が不細工でみんなからバカにされていたのは無関係だ。


そんなことで恨まれたり、憎まれたりしたら、きりがないし、たまらない。


もしもあのクラスに私がいなくても忍がブスだっていう事実は少しも変わりやしないのに……。


私は殺気をみなぎらせている忍が恐ろしくて、体を震わせながら後ずさりを続けていた。


でもそのとき、忍から遠ざかろうとしていた私の足が私の意思とは関係なく動かなくなってしまった。


それはまるで強烈な金縛りのようで、私は自分の体が思うように動かないことに心から焦っていた。
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