カウントダウン
(そっちに歩こうとしていないのに、何で勝手に歩いているの?

私の意思が私の足に伝わらない……。

お願い、止まって!

そっちに行ったら、私は……)


私が歩いていこうとする先にある、火がかけっぱなしの鍋にゾッとしていた。


ついさっきまで、雄太が来たら美味しいカレーを食べさせてあげたいと思っていた。


この部屋に雄太が来てくれて、一人ぼっちじゃなくなった私は、忍の呪いを回避できるのではと思っていた。


あんな陰キャ眼鏡の忍なんかに逆恨みさえされなければ、私の人生はいつもキラキラ輝いていて、誰もがうらやむものになっていたはずなのに……。


忍みたいな底辺のカスに幸せを邪魔されるような私じゃないのに……。


最悪の結末が私の頭に浮かんできて、私の顔が恐怖でこわばってきた。


沸騰したお湯が入っている鍋まであと三メートル。


勝手に動く足を止めない限り、私にはきっと不幸が待っている。
< 113 / 294 >

この作品をシェア

pagetop