カウントダウン
私はその日の夜、泣きながら昨日の誕生日のことを思い出していた。


最高に楽しかったあの日の夜は、もう二度と戻らないし、あの日の夜が再現されることも二度とない。


あの日の夜は、この家を出ていった母に作られた出来事だったと私は気づいた。


だから母は私が大好きなおとぎ話のような演出をしてくれたのだ。


でも、それはたった一夜の出来事だ。


私が本当に欲しかったのはそれじゃないのに……。


あの誕生日の日から今日まで、私は母に会っていない。


母は今の私に会っても気づかずに通り過ぎていくのではと、私は思う。


大好きだった母も今の私には憎むべき存在だ。


母は私を捨てたから。


母は私に興味なんてないのだから。
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