カウントダウン
『もしも呪いを解きたいのなら、私が書いた遺書を探せ。

その遺書には呪いを解くカギがある。

私の思いがそこにある』


オレは忍のメッセージをまた思い出し、忍の遺書の存在について考えていた。


忍の死は自殺である可能性があったため、忍の担任教師という立場上、忍の自殺を証明する遺書が出てくることをオレは恐れた。


もしも忍の遺書があったなら、そこに書かれているのはきっとクラスメイトからのいじめのことだ。


忍は今までの恨みと憎しみを込めて、実名で自分を死に追いやった人間を糾弾しているに違いない。


だとしたら、当然、オレは忍の担任教師として責任を問われる。


そして教師を続けている間、ずっといじめによる自殺者を出した教師と陰口を叩かれることは間違いない。


こんな最悪の事態になるならば、めんどくさくて気乗りがしなかったとはいえ、忍へのいじめ問題を真剣に考えるべきだった。


いじめで生徒が死ぬなんて、たまにニュースで見るくらいの自分とは関係のない出来事だと思っていた。


自殺なんてバカらしいとオレは思う。


まだ中学生なのに、死にたいと思う心理がオレには少しもわからない。


嫌なことなんて、きっと時間が解決してくれるのに……。


中学を卒業したら、もうあの教室に来なくても大丈夫なのに……。


オレは呪いの始まりになった忍の死をなかったものにしてやりたい。


そしたら、オレは今でも何の悩みもなく、教師を続けられていたのだから。
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