カウントダウン
「ああ……、もしもし」


オレは電話に出た忍の父の品のない声を聞いて、激しい嫌悪感を抱いていた。


忍の父はおそらく朝から酒を飲んでいる。


仕事もしない忍の父は酒を飲むことで朝から時間を潰しているのだ。


何の生産性もない生き方をしている父を持った忍がかわいそうに思えてきた。


忍の父に尊敬できるとこなど何もない。


忍の父は人の親になってはいけない人間なのだ。


オレはそんなことを思いながらも、忍の呪いを解くために忍の父に話しかけていた。


「もしもし、杉田さんですね。

私は忍さんの担任の教師をしていた梅田と言います。

今日は杉田さんに聞きたいことがあって電話しました」


もしも自分が教師でなかったら、忍の父のような人間と知り合うこともなかったし、こんなへりくだった話し方をすることもなかっただろう。


オレは忍の父が嫌いだったけど、今の自分は客と向き合うセールスマンだと自分に言い聞かせた。


オレは忍の父からどうしても必要な情報を引き出さなくてはいけないのだ。


忍の遺書はどこにあるのか?


それさえわかれば、忍の呪いが解けるから。
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