カウントダウン
「忍の担任教師?

先生がわざわざ電話を寄越すなんて光栄だね。

今さら忍の何が知りたい?」


電話越しでも呂律の回らないその口調で、忍の父が酔っているのが伝わってくる。


オレは朝から酒を飲む人の気持ちがわからないし、わかろうとも思わない。


忍はこんな自分の父をどんな目で見ていたのだろう?


忍の暗い性格の原因は、きっと家庭環境のせいに違いない。


オレはなるべく早く忍の父との会話を終わらせるために、最初から本題に入っていた。


「じつは忍さんの死は自殺だったんじゃないかって思っていまして……。

だけどそれは推察の領域で、証拠なんてありません。

もしも忍さんの死が私の思うように自殺だったとしたら、忍さんの家に遺書があるはずなんです。

杉田さん、何か知りませんか?」


もしも忍の父が忍の遺書を隠していたとしたら、忍の呪いの問題はすぐに解決するだろう。


忍の遺書に呪いを解く鍵があるはずだから。


忍がメッセージでそう言ってきたのだから。


オレは沈黙の中で、忍の父の言葉を待っていた。


その言葉に忍の呪いを解く鍵があると信じながら。
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