カウントダウン
「ひぃっ!」と声を上げて、オレは反射的に振り向いていた。


さっきまで決して振り向かないって決めていたのに……。


背後にいる何者かに気づいてはいけないと思っていたのに……。


「やっと振り向いた……。

もう私に気づかないフリはさせない」


「し、忍……。

どうして、お前……」


オレは小声でそうつぶやきながら、目を合わせてしまった忍の姿にゾッとしていた。


忍は白いセーラー服を着ていたが、そのセーラー服は血で赤く染まっていた。


忍はいつものように前髪で額を隠していたが、忍の顔には額から流れてきた血がべっとりとついていた。


忍はいつものように丸い黒縁メガネをかけていたが、そのメガネの奥の瞳は憎しみに燃えていた。


(忍は死んだはずなのに……)


そんなことをオレが思っていたとき、忍は血走った目を大きく見開き、急にオレに顔を近づけてきた。


オレがそのことにハッとして息を詰まらせ、全身が恐怖に包まれたとき、オレは悪夢から目覚めて目を開き、布団の中でドキドキと音を立てる鼓動を感じながら、部屋の天井を見つめていた。
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