カウントダウン
「あの教室で過ごす時間は地獄だった。

私はあの地獄から抜け出したくて、必死に助けを求めていた。

担任教師のお前に!」


「忍……。

悪かった……。

オレはお前がそんなに苦しんでいるなんて思ってなかったんだ。

反省している……。

だから……」


「私はお前に助けを求めても誰も助けてくれない苦しみを教えたい。

お前は私の苦しみを少しも知らない。

一人ぼっちの悲しみを少しも知らない」


憎しみのこもった忍の声を聞いて、話し合いは無理だとオレは悟った。


忍は最初からオレを殺すつもりで、その考えは変わらない。


だとしたら、オレができる唯一のことは、忍がいるこのアパートから全力で逃げることだ。


忍の呪いが届かないほどに遠くへ逃げたら、きっと助かるに違いない。


オレはそう思うと、呼吸もままならない不安の中で忍に背を向け、全力で走り出していた。
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