カウントダウン
「もしもし」


雄一のスマホから聞こえてきたのは、落ち着いた感じの大人の女性の声だった。


雄一はスマホをしっかりと握りしめ、忍のお母さんと話し始めた。


「もしもし。

オレは忍さんと同じ宮国中学、三年二組の生徒です。

忍さんのお母さんで間違いないですよね」


「ええ……。

そうですが」


「突然の電話ですみません。

でも、どうしてもあなたに聞かなくていけないことがあって……」


雄一はそこまで言うと、一度、言葉を区切った。


そして決意を固めて、忍のお母さんに聞きにくいことを話し始めた。


「オレたちは忍の遺書を探しているんです。

でも、手がかりが何もなくて……。

お母さんは何かを知ってませんか?」


「忍の遺書?

どうしてそんなものを探しているの?

忍は交通事故で死んだはずなのに」


「確かに忍さんは交通事故で死にました。

でもオレたちは忍さんの死が、自殺だったと思っています。

それで忍さんの遺書をオレたちは探しているんです。

きっとどこかに忍さんの遺書はあるはずだから」


忍のお母さんからしたら、雄一の話しは信じたくないし、信じがたいことだと思った。


そして今から忍の自殺の原因がクラス内でのいじめだったと知ったら、忍のお母さんはどんな気持ちになるだろう?


私は胸に刺さるたくさんの痛みを感じながら、雄一と忍のお母さんとの話を聞いていた。
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