カウントダウン
【柳田貴史side③】

オレは忍の悪霊から逃れるために無我夢中で学校を抜け出してきた。


どこに逃げて行けば忍の呪いを遠ざけられるかはわからない。


オレは息がきれて走るのを止めたかったけど、走るのことを止めるのも怖かった。


オレが走るのを止めたとき、また背後に忍が現れてオレを殺そうとするかもしれないからだ。


誰にも助けを求められない状況にいるオレは忍の呪いに抗うこともできず、苦しさの中で死んでしまうかもしれない。


カウントダウンは続いている。


忍の呪いを解かない限り、オレは……。


解決策のない未来予測は不安と恐怖を膨らませ、オレの心を弱らせていく。


どんなに想像を巡らしてみても、不幸な結末しか見えてこないオレの未来に、オレは泣きそうなくらいに絶望していた。


(オレはみんなの目の前で美保子の首を絞めちまった……。

美保子は白目を向いて意識をなくしていたけど、もしかしてオレは美保子を殺したのか?

オレはこれからどうすればいいんだよ。

オレが犯した罪は殺人か殺人未遂……。

オレはもう普通の中学生には戻れない……)


成績がそれほど良くないオレでも普通に高校に進学して、上手くいけば大学にも行けるんじゃないかと思っていた。


だけど、そんな考えはもう妄想以外の何物でもない。


オレの未来は急速に闇の中に落ちていったのだ。


オレは絶望的な未来を思うと、その未来を受け入れたくなくて、走りながら大声で叫んでいた。


親は犯罪を犯したオレに何て言うだろう。


オレは完全に取り返しのつかないことをしてしまったのだ。
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