カウントダウン
「もしもお前が私を助けていたら、私の未来は変わっていた」


体が少しも動かないオレのところへ忍がゆっくりと近づいてくるのは恐怖だった。


あの血まみれのセーラー服は忍が事故にあって死んだときの服装だ。


だとしたら、死んだ忍がオレをまだ憎んでいて、その思いを伝えにきたのだろうか?


確かにオレはクラスでいじめがあることを知っていた。


でも、いじめはいじめられる側にも落ち度があるのが大半だ。


忍は自分をいじめている特定の人間の名前を言わなかった。


だったらオレは犯人探しでもしなければ、忍をいじめている奴を特定できない。


オレがクラス全体にいじめを止めるように指示をしても、その言葉は誰にも届かず、火に油を注ぐだけだろう。


ゆっくりと歩いてきた忍は金縛りで動けないオレの目の前に立ち、オレの目をのぞき込むと、不気味な声で話し始めた。


「カウントダウン……。

梅田大翔……。

三日以内にお前は死ぬ」


忍が言ったその言葉には本物の殺意が込められているような気がして、オレは思わず息をのんだ。


忍の言葉が意味するところは、呪いによる死の宣告だ。


でもこの世に呪いなんて存在するのか?


オレはそんなことを思いながら、血走った忍の目を怯えながら見つめていた。
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