カウントダウン
【柏木愛美side②】

「柏木愛美……。

私はお前が私にしたことを忘れない。

お前への復讐が私の生きた証なんだ」


私は柳田貴史が教室内で忍の呪いに怯えているとき、死んだはずの忍の声を確かに聞いた。


私はそれまで幽霊とか呪いとかをバカにして信じたことなどなかったけど、今の私は忍の幽霊や呪いを恐れている。


私は忍に呪いをかけられ、その呪いが発動するまでのカウントダウンを忍の低く不気味な声で、何度も何度も聞かされているのだ。


今までの私なら、忍が口にするカウントダウンなんて無視することもできたかもしれない。


でも、実際に忍の呪いを口にした柳田貴史は狂ったように教室を出ていき、その一時間後に事故にあって呆気なく死んだのだ。


貴史の死の原因が忍の呪いだと断言することはできないが、忍の呪いと無関係だと言いきることもまたできない。


それに貴史だけじゃない。


クラスで人気のあったあの清水美保子も忍の呪いに怯え、その後、病室の窓から落ちて死んだのだ。


もしも忍の呪いが本物ならば、次に忍の呪いで死ぬのはこの私に違いない。


ブスな忍を陰キャ眼鏡とからかって、いつもいじめていた私だから。


最後に私が見た忍の幽霊は、「24時間以内にお前は死ぬ」と私に言った。


圧倒的な弱者であったはずの忍に私が追い詰められるなんて、忍が生きていたときには想像すらできなかった。


男子からチヤホヤされる私と、いいとこなしの忍では住む世界が違うと思っていたから。
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