都合のいいふたり
そのマンションに阿川涼介が転がり込んで来たのは、今から半年前だった。
ことの始まりは、1本の電話からだ。
私は、杉村歩(あゆむ)28歳で、友達からは「あゆ」と呼ばれている。涼介とは高校の同級生で、同じクラスになったこともある。
涼介は地元の大学を卒業した後、就職のために上京してきた。それ以来、他の同級生も集まって、時々、皆んなで飲みに行くようになった。
二人で行くこともあったけど、それ以上の関係になったことはない。
そんな涼介から電話が掛かってきた時には、いつもの飲みの誘いだと思っていたのに、彼の声は切羽詰まっていた。
「あゆ、助けて。」
「どうしたの?何かあった?」
「俺を少しの間でいいから、居候させてくれ。」
「居候って、どうして?家賃でも滞納したの?」
いくら高校の同級生とは言え、私達は異性だ。
居候はないでしょう。
「実は、俺のマンションで火事があって、急に立退くことになったんだ。俺、行くとこない。」
「それは大変だね。でも、彼女に頼めば?」
「1ヶ月前に別れた。」
「だったら、ホテルは?補償とかあるでしょ?」
「だって、荷物はどうするんだよ。」
「火事なんだったら、荷物なんてないでしょ。」
「俺の部屋は燃えてない。スプリンクラーが作動して、水浸しになったけど。」
「じゃあ、友達とか同僚は?」
「あゆ、冷たいこと言わないで頼むよ。新しい家見つけたら、すぐ出て行くからさ。お前の家広いし、部屋も余ってるだろ。」
『私は、この友達を救うべきか?』
と、色々と考えてみた。
正確に言えば、この家は私の家じゃない。
会ったこともない父の家をお借りしているだけだ。
私も、ここを急に出て行けと言われたら、確かに困る・・・。
「本当に少しの間だけなら。」
「ありがとう!まじで助かるよ!
じゃあ、今から行くから。」
「えっ、今から?!」
「だって、俺、寝るとこ無いし。じゃあ、後でな。」
「待ってよ。」と言う前に電話は切れた。
私の都合なんてお構いなしの涼介に、この先の生活が思いやられた。
どうか私の平穏な生活が壊されませんように・・・。
ことの始まりは、1本の電話からだ。
私は、杉村歩(あゆむ)28歳で、友達からは「あゆ」と呼ばれている。涼介とは高校の同級生で、同じクラスになったこともある。
涼介は地元の大学を卒業した後、就職のために上京してきた。それ以来、他の同級生も集まって、時々、皆んなで飲みに行くようになった。
二人で行くこともあったけど、それ以上の関係になったことはない。
そんな涼介から電話が掛かってきた時には、いつもの飲みの誘いだと思っていたのに、彼の声は切羽詰まっていた。
「あゆ、助けて。」
「どうしたの?何かあった?」
「俺を少しの間でいいから、居候させてくれ。」
「居候って、どうして?家賃でも滞納したの?」
いくら高校の同級生とは言え、私達は異性だ。
居候はないでしょう。
「実は、俺のマンションで火事があって、急に立退くことになったんだ。俺、行くとこない。」
「それは大変だね。でも、彼女に頼めば?」
「1ヶ月前に別れた。」
「だったら、ホテルは?補償とかあるでしょ?」
「だって、荷物はどうするんだよ。」
「火事なんだったら、荷物なんてないでしょ。」
「俺の部屋は燃えてない。スプリンクラーが作動して、水浸しになったけど。」
「じゃあ、友達とか同僚は?」
「あゆ、冷たいこと言わないで頼むよ。新しい家見つけたら、すぐ出て行くからさ。お前の家広いし、部屋も余ってるだろ。」
『私は、この友達を救うべきか?』
と、色々と考えてみた。
正確に言えば、この家は私の家じゃない。
会ったこともない父の家をお借りしているだけだ。
私も、ここを急に出て行けと言われたら、確かに困る・・・。
「本当に少しの間だけなら。」
「ありがとう!まじで助かるよ!
じゃあ、今から行くから。」
「えっ、今から?!」
「だって、俺、寝るとこ無いし。じゃあ、後でな。」
「待ってよ。」と言う前に電話は切れた。
私の都合なんてお構いなしの涼介に、この先の生活が思いやられた。
どうか私の平穏な生活が壊されませんように・・・。