都合のいいふたり
そして1ヶ月が過ぎた今日、大きな賭けに出た。
俺のミッションは「あゆを映画に誘う」ことだ。

この1週間毎日、会社帰りの電車の中でシュミレーションをしていた。

なるべくさり気なく、あゆの「YES」を引き出せるようにと。

切り出すタイミング、最初の言葉、その後のやり取り。もう、それは妄想に近いぐらいだった。

これは一つ通過点に過ぎない。俺の最終目標は「男としてあゆからの信頼を得る」ことだ。

あゆは他人に心を閉ざしているところがある。
彼女の生い立ちがそうさせているのだろう。

それに、おじいさんの言葉は、彼女に多大なる影響を与えている。

「人を信用しすぎるな。でも、自分からは裏切るな。」

この教えのせいで、俺には大変な試練を与えられた。
おじいさんは何故、信用する人を選べと言ってくれなかったのか・・・。

でも、同時にこの教えのおかげで、今でもここに住んでいられることに感謝する。

彼女にとって一度居候を認めてしまった行き場所のない俺を追い出すことは、裏切ることになるからだ。

最終目標へのゴールはまだまだ遠いだろうけど、俺は決して諦めるつもりはない。

俺はあゆを誰よりも幸せな女性にする。
< 23 / 57 >

この作品をシェア

pagetop