都合のいいふたり
「歩（あゆむ）じゃないか？久しぶりだね。元気だった？」

さっきまであんなに楽しそうにしていたあゆの顔がみるみる硬っていく。

「どうして？」

「偶然だよ。俺もたまには家族サービスが必要だからな。歩は、新しい彼氏とデートか？」

こいつがあゆの不倫相手か！
よく、元不倫相手の前で、家族サービスとか言えるな！

「そんなんじゃない。」

あゆはキッパリと否定した。

あゆもそんなに否定しなくても・・・。
こいつの手前、嘘でも彼氏だと言っても良かったんじゃないか。それとも、こんな男でもまだ未練があるから、俺と誤解されるのが嫌なのか。

次は俺に話し掛けて来る。
どんな神経をしてるのか、同じ男でも理解不能だ。
ただ、こいつが最低な人間なのは分かった。

「お兄さん、この子はこう見えて、男と同棲してるから騙されないように、気を付けた方がいいよ。」

その言葉を聞いて、俺は殴り飛ばしてやりたい衝動を必死に抑えた。

「ご心配なく、その同棲相手は俺なので。あゆ、別の店にしよう。」

とにかく、あゆをこの男から引き離さなければ。
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