都合のいいふたり
夜中に目覚めると、涼介が隣で寝息を立てていた。

私はそっとベッドから起き上がり、散乱した服や下着を掻き集める。ベッドから出ようとした時、涼介が私の腕を掴んだ。

「行くなよ。」

そのまま引っ張られると、私は彼の腕の中に戻された。
ここは温か過ぎる。

「涼介、どうして私を抱いたの?」

「あゆが辛そうにしてたから。あゆは、どうして俺に抱かれたの?」

「私のせいで、涼介が映画を観れなかったから。」

「何?お詫びのつもり?」

「うん。」

しばらく沈黙が続く。

「じゃあ、また俺達の利害関係は成立したって事だな。」

「そうだね。」

悲しい関係、恋人同士なら「ただ好きだから。」で成立することなのに。

「でも、お詫びなら、今日だけじゃ足りない。俺が許すまで、あゆは俺のものだから。」

「映画ならまた観に行けるから、許してよ。」

「駄目だ。あゆは俺のものだから。」

そう言うと、涼介は息が止まるぐらいに私を抱き締めた。
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