都合のいいふたり
私達の同居生活は、相変わらず続いている。
お互いが家に居れば、一緒にご飯を食べたり、お酒を飲んだりするのは、今までと変わらない。

変わったことと言えば、涼介が週末の夜になると、私を抱くことぐらいだ。

映画を見れなかった次の週末、私達がレンタルのDVDを見終わり、いつもならそれぞれの部屋に戻る時間だった。

「あゆ、俺のものになる時間だよ。」

そう言うと、涼介が私の手を引いて自分の部屋に行こうとする。

「どういう意味?」

「だって、俺言ったよね。俺が許すまで、あゆは俺のものだって。」

「そうだけど・・・。」

こんな風に、私達の週末だけの関係が始まってしまった。

もちろん、私が拒否すれば涼介は引き下がっただろう。でも、私は涼介に抱かれることを選んだ。

だって、私はその時、既に涼介のことを好きになってしまっていたから。

それを自覚したのは、あの人に偶然にも会ってしまった時だ。私は彼を見て驚きはしたけど、何の感情も湧かなかった。だから、冷静でいられたし、最低な恋だったと自分の愚かさを後悔し、反省もできた。

それはずっと近くで私に向き合い、支え続けてくれた涼介の存在があったからだ。私は自分の気持ちを隠してでも、涼介との時間を過ごしたいと思った。

それに私は、涼介を根拠もなく信じてもいたから。
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