都合のいいふたり
あゆは、こんな豪邸の主人の娘だったのか。

高級住宅街の中でも一際目立っていた。
ここは、あゆがまだ会ったことのない父親の家だ。

あゆは父親の話をしようとはしない。
だから、俺は今まであゆの父親が誰なのか知らなかった。でも、うちの母親なら知っているかもしれないと思い電話をすると、予想通りに母は知っていた。

あゆは「高山不動産」社長の娘だった。
高山不動産と言えば、日本を代表する不動産会社で、戦後の混乱の中、土地を運用して、日本経済の発展にも貢献したと言われている。

あゆの父親は、俺の想像を遥かに超えた経済人だった。あゆがあの高級マンションに住んでいるのは納得できた。

あゆの父親は3代目で、俺でさえ雑誌やテレビで見たことがある。
言われてみれば、目元の辺りがあゆに似ている気がする。

あゆは会ったことはないと言っていたけど、テレビで見たことはあるだろう。

どんな思いで父の姿を見ていたのかと思うと、心が痛くなる。

俺は無謀にも「高山不動産」のホームページに載っている代表電話に電話をした。
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