都合のいいふたり
初めての幸せの冬
涼介はクリスマス前の週末、使わない荷物だけを運び、一応の引っ越しをした。

二人で、ベッドと小さなテーブルを買いに行った。
どうしても、週に一度はここで過ごすらしい。

きっと、私が言った「家賃が勿体ない」と言うのを根に持っているに違いないと思いつつ、涼介のプライドを傷付けたことを反省する。

「俺の城だけど、あゆにも住まわせてやってもいいよ。」

「私が居候するってこと?」

「まぁ、そうなるな。こっちの家にいる時は、俺がご主人様だからな。ご主人様の言うことは絶対!だからな。」

「はい、ご主人様。」

「じゃあ、一つ目の命令。」

「何?」

いきなり、命令とかされるんだ。居候の時は、命令なんて言わなかったのに。

「正月は二人で地元に帰ること。」

私は、思いも寄らない命令に呆れる。

「私には、帰る家ないよ。」

「あるだろ、俺の実家が。」

「そんなの悪いよ。」

「何言ってるの。近い将来、あゆの実家にもなるんだから。母さんも娘ができるって喜んでた。」

「もう、ご両親に話したの?」

「母親だけな。『しっかりしろ。』って喝まで入れられた。」

涼介って案外、暴走型なんだと改めて知った。
結婚するなんて言ったことも言われたこともないのに。

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