都合のいいふたり
「何?もしかして彼氏でもできた?」

その言葉に絶句する。
不倫だけど、人から隠さないといけない関係だけど、それでも今この時間だけは、私の彼氏はあなたではないの?

「そんな訳ないじゃない。でも、最近、ルームシェアをしてるの。一時的なものだけど。」

「誰と?」

「高校の同級生。住んでたマンションが火事になったらしくて、次の家が見つかるまでの間だけだけど。」

「俺も入れてくれない歩の家に住めるなんて、羨ましいな。」

彼は、同居人が男だなんて微塵も思っていない。

「あのね、同居人、男の子なんだ。」

今度は、彼が絶句する番だ。
私は敢えて告白した。今しかないと思った。
その先の結末がどうなるかを知った上で。

「歩って案外、軽い女だったんだね。まぁ、俺みたいな結婚してる男と付き合ってる時点で、そんなもんだろうと思ってたけどな。」

よく自分を棚に上げて、そんな風に言えるものだ。

「軽いって何?私達は、そんな関係じゃない。彼は高校の時からの友達だよ。」

「男と女が一緒に暮らして、何も起こらないなんてあり得ないだろ。」

「今どき、シェアなんて普通のことだけど?」

「だから、そんな風に平気でそう言える君みたいな女を軽いって、言ってるんだよ。」

この人は、私をこんな風に思っていたんだ。
不倫をする男に限って、独占欲が強い。私はその独占欲を「愛されている」と勘違いしていた。

所詮は、彼にとっては遊びだった。

彼と結婚できるなんて思ってなかったけど、少なくとも、私は「本気」では好きだった。
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