都合のいいふたり
私が今まで言えずに我慢していた一言を、やっと言える時がきた。

「自分だって結婚してるくせに。それを隠して、私と付き合ったくせに。」

彼には悪びれる様子もなかった。

「そんなのお互い様だろ。お前なんて、男と住んでるんだから。」

私は今まで、この人の何を見てきたのだろうか。

「俺達、もう終わりにしようか。このままの関係を続けていても、君にとっても良くないよな。
君との時間は楽しかったよ。ありがとう。」

そう言うと、彼は食べかけの食事も飲みかけのワインも、そして私も置いて部屋を出て行った。

一人残されて、呆然となる。
『君にとって』なんて思ってもいないことを・・・。

想像以上にあっさりした別れに、私は傷付いた。

彼は切っ掛けを待っていた。
もう潮時だと思っていたはずだ。

涙が溢れて来る。

彼が好きだった。
今までにも付き合った人はいたけど、誰よりも大人で優しくて、私を大切に扱ってくれた。

ここに来るまでも、胸が高鳴るぐらい、彼に会いたいと思っていたのも本当だ。

だからこそ、彼が結婚していると知った時から、未来はないと自分にも言い聞かせてきたし、普通のカップルみたいなデートも我慢した。

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