熱い熱がたまる
4
✴︎


席に戻る。

すでに、次の回が始まっていて、細いおじいさんに謝りながら座ったら、大丈夫と合図された。

舞香が周りを気にしているのをみて、また貴文はなんとも言えない顔をした。


どん、
どん、


トランペットがそれぞれの応援歌をならし、会場中の人が歌う。

決まった応援を、全員がしている。

唐揚げとビールを持っているから、手を鳴らしたりはできないけど、貴文も慣れた様子で、大きな声で応援している。

その声を聞いていると、

なんか⋯⋯ 、

体の奥に火がつくような⋯⋯ 、

なんとも言えない熱い気持ちがどんどん膨れていくような、

こんなに、大勢が叫び、歓声が湧き上がるのに、隣の彼の声だけが耳に入ってくる⋯⋯ 。


すこし荒々しく。
男らしい。

慣れた様子に、

少しぞんざいな応援の仕方。

彼の低い声。

語尾が男らしくて、何だか⋯⋯ 。


ビールに特別強くないけど、ものすごく弱いわけじゃない。
でも、それが体にまわって、酩酊したように、さらに熱を発して、
隣の貴文と同じものが体に入っているから、彼もそんな気持ちなんだろうか。

外気がだんだん夕方になっていく、
夕日が熱くて、影が濃くなってきて、風がほおにあたって、髪を揺らす。

いつの間にか食べ終わった器と、飲み干したビールを2つ分重ねる時、手先がちょっと貴文の手先にあたり、ピクンと心も手もはねる、それが貴文にバレたのか、彼がキツい目で、威嚇するように舞香を見た。

立ち入るな、感じるな、と言っているようだった。


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