熱い熱がたまる
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2週間後。


「舞香、また、お願いしていい? 」


とまゆ子が野球のチケットを渡してきた。

どうやら、カレシさんが年間シートを持っていて毎週行っていたのに、カレシさんの仕事のシフトがかわり、隔週行けなくなったらしい。
じゃぁ、もしかして、とチケットを受け取りながら、ドキッとする⋯⋯ ?


「あー、こないだの代わりに来た人がまた行くらしいよ。
その人会社の3コ先輩らしいけど、球団のファンなんだって」


それからまゆ子が、嫌な人じゃなかったかとか、迷惑じゃないか、聞かれたけど、曖昧に返事した。
うまく説明できない。

どうしよう、嬉しいかも、また会える⋯⋯ この熱の行方⋯⋯ 。


彼が舞香と連絡を取ろうとしない事に、この2週間密かに傷ついていた。
自分からなんていいんだろうか、
とか、
でも、代わりの人なんて誰でもよかったわけで、その場限りのたまたまだっただけかとか⋯⋯ 。
でも確かに感じた熱い熱が苦しく出口を求めて、悩んでいたんだ。

彼に会える。


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「北川さーん、またお願いしまーす」

「お前な⋯⋯ いいのか? 」

「何がです? あっ、やべ、上司に呼ばれてるんだ! 」

と慌てて、チケットを貴文の手に握らせて、秋山はあわてて後ろも見ずに出ていった。



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