熱い熱がたまる
7
✴︎


「秋山が⋯⋯ 」


舞香は最初、貴文の話す秋山が誰かピンと来なかった。
しばらくして、あ、まゆ子のカレシさんか、と思い出した。

でも、さっきからずっと秋山さんの話をしているから、悪いけど知らない人の話に興味がなくて。

そのうち、あまりにも舞香が気のない相槌を打っていたので、唐突に貴文が話をやめた。


「興味なかった? 」

「⋯⋯ 」


知らない人の話だからね⋯⋯ と思うが、あからさまに言うのも申し訳ないような、
と考えていたら、


あっ


と試合が動き、大歓声に包まれる。

応援旗が空を舞い、興奮が包む。

貴文も秋山さんの話をやめて、試合に集中する。
観客も総立ちになり、舞香たちも立ち上がる、

横の貴文の横顔に吸い寄せられた。

目が離せなくなった。

生き生きとした彼の発散する熱に、やられてる。

なんか、この人にくっつきたくなる。

熱さをじかに触りたくなる。
大歓声の中、貴文が舞香の視線を感じたのか、パッと見た。

貴文は試合を忘れたように、唇を少し開いて、舞香に見入った。
お互い目が離せなくなった。
自然に近寄ってしまう、舞香が、思わず貴文の袖を握ってしまった、貴文はふりほどかなかった。



✴︎


「秋山、おまえ、カノジョと上手くいってんの? 」

「はい? あったりまえじゃないっすか!
もう愛らしいんすよ、まーちゃん!
オレの事、大好きだよ、なーんて、毎日っす! 」


言うだけ言って、秋山はまた、忙しそうに走って行った。

貴文は取り残された。


✴︎

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