藍先輩の危険な溺愛レッスン。
あの時手を振ってくれたのは私に対してだったんだ。


てっきりあそこにいた女子達全員にだと思っていた。


彼が気が付いてくれていた事でちょっと胸が弾む。


「あの時実は、愛菜ちゃんが泣きそうな顔に見えたんだけど……」


彼は私のことを不安そうに見つめる。


「えっ、そんなこと」


「今も元気がなさそうだったし。もしかして俺のせい?」


「それは」


見透かされているような気がしてドキッとした。


私ってそんなにいつもと違っていたのかな。


「愛菜ちゃん、あぶないよっ」


先輩は私の肩を抱き寄せた。


後ろから自転車が来ていてすぐ横を通り過ぎていく。


「ごめんなさい、ボーっと歩いてて」


「いや、こっち歩いて」


謝って急いで離れようとしたら彼は、歩道側を歩くように言ってくれた。


それからそっと手を繋いできた。
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