藍先輩の危険な溺愛レッスン。
彼はようやくそこで手を離した。


なんてタイミング、もう少し家が遠かったらよかったのに。


「うん、持ってます」


彼の方を見れなくて小さい声でそう言ってバッグから自宅の鍵を取り出そうとした。


「わっ」


だけど、手がぶるぶる震えてしまって鞄を落としてしまった。


慌てて屈んだら、同じように屈んだ先輩と目があった。


カーッと頭に血が上って目をそらしてしまった。


「はい、愛菜ちゃん」


「ありがとござ……ます」


全身カチコチになってお礼を言った。


先輩は困った顔をしている。


なにか言わなきゃ、どうしよう、このままじゃ誤解されちゃう。


本当は彼の言った言葉が嬉しくてたまらないのに。


「ごめん、びっくりさせて……」


彼に謝らせてしまった。


気を使わせてしまっているみたいでますます焦った。
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