藍先輩の危険な溺愛レッスン。
「ううん、ううん」


必死で頭を振るけど、これ以上なんて言ったらいいかわからなくて軽くパ二ック状態。


「じゃあ、俺行くから。早く中に入って」


優しく促されたから、コクッと頷く。


自宅は広くも狭くもない普通の一軒家で、ドアの前には小さくて黒い門がある。


その門を開けて中に入るのを確かめてから先輩は私に背を向けた。


だけどこのまま離れたくないって思った。


せっかく好きって言ってくれたのに。


びっくりしすぎて、頭が真っ白になってしまった。


彼は出会ってから毎日私に楽しいことをたくさんくれた。


恋する甘酸っぱい気持ちも、一緒にいる幸せも、大切にされる喜びも。


全部、先輩がくれたもの。


私だって彼にあげたい。


「待って、せんぱい」


鍵も鞄もその場に置いたまま、彼を追いかけた。


「待って」
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