藍先輩の危険な溺愛レッスン。
彼は10メートルほど先を歩いていたけれど、すぐに振り返ってくれた。


「先輩、先輩」


「愛菜ちゃん?」


驚いている彼めがけて勢いよく駆け寄る。


そのまま彼の胸に飛び込んだらギュッと抱きしめられた。


「愛菜ちゃん、どうした?」


彼は嬉しそうに顔をクシャッとさせた。


「せんぱい」


大好きな人。


「うん」


「あいせんぱい」


その優しい声も、まなざしも。


「うん」


「せんぱい」


ぜんぶぜんぶ、私だけのもの。
そう思ってもいいですか?


「うん」


「まだ帰らないで」


今の私にはそれだけ言うのが精一杯だけど。


彼は私の様子に安堵したみたいだった。


「わかった」


恥ずかしそうに瞳を泳がせてから強く頷いてくれた。


だけど、彼が塾の途中で抜け出してきてくれていたことを思いだした。


「あ、ごめん。先輩塾に戻らなきゃいけないのに」


引き留めたら迷惑になるよね。こんなのわがままだ。


「大丈夫だよ、もう少し一緒にいよう」


彼は爽やかに笑ってる。

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