藍先輩の危険な溺愛レッスン。
「先輩、このまますぐに行かないと間に合わなくなるかも。私の着付けが長引いてしまってごめ」


言い終わらないうちに彼に腕を引かれて部屋に入れられた。


ばたんと玄関のドアが閉まってそのままなぜか彼の腕の中に抱き寄せられていた。


え?


「あの……どうしたんですか?」


「いや、なんでもないよ」


かすれたような声で言われさらに力強く抱きしめられる。


明らかになんでもないって雰囲気じゃない。


「せんぱい?」


「どうしてかな、自分でもよくわからない」


「えっと」


顔を上げたら困惑したような彼の視線とぶつかった。


「愛菜ちゃん、綺麗だよ」


「ほ、ほんと?」 


嬉しくて胸が弾んだ。


だけど、彼の様子がおかしいような気がした。


いつもの包み込むような優しい笑顔が何処にもない。


「うそ……ほんとはあんまり良くないんでしょ?」
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