藍先輩の危険な溺愛レッスン。
「無理、絶対ヤダ」


「こら我儘言わないの」 


「だって怖い、男の人は怖いんだもん」


半べそをかきながら断っても母は許してくれなかった。


それどころか、引きずるように店の外に連れていかれて挨拶をさせられた。


母はこうと決めたら絶対引かないタイプだ。


そして私はたいてい母の言いつけには強く逆らえない。


「こ、こんにちは」


小さい子供みたいに母の背中に隠れてそれだけ言うのが精一杯。


「君が愛菜ちゃんか、やっと会えたね」


「は、はい」


彼の方を見ないで小さく返事をした。


さっき、覗き見していたことには触れないでいてくれる。ちょっとありがたかった。


チラッと上目遣いで見上げたら、優しく笑ってくれた。


悪い人じゃないとは思う。


母とよく喋っているから知らず知らずのうちに親近感が湧いているのは確かだった。
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