藍先輩の危険な溺愛レッスン。
『それに、愛菜があんなに自然にお話しできるのって彼だけでしょ。この際、ちゃんと男性恐怖症を治すお手伝いをしてもらいなさいよ』


母にはこんな風に説得されてしまった。


その上こんなことまで言われた。


『二人を見てると兄妹みたいで微笑ましいわ』


ど、どこが兄と妹なんだか。


妹に対してあんなあやしげなことを言ってくる兄なんていない。


兄に対して頬を赤らめる妹なんて存在しないってば。


先輩のお部屋のドアの前でピンポンを押すのを戸惑っていたら、突然中からドアが開いた。


ガチャ。


「いつまでそこでつっ立ってんだよ。
弁当が冷めちゃうだろ」


あきれ顔の先輩は、白いTシャツにひざ下短パンというラフな格好だった。


濡れた前髪を無造作にかきあげるしぐさが妙に艶っぽくて……。


もうそれだけで逃げ出したくなった。
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