春、君に別れを告げた
寂しい、と口にすれば未来は必ずスヒョンのそばにいてくれるし、電話も付き合ってくれた。その時だけ、自分が未来の彼氏になれたような気がして、スヒョンはどこか嬉しいと感じていたのだ。

恋というものは、もっと綺麗なものなのだとスヒョンは信じていた。恋愛ドラマはいつだって甘くて、幸せで、美しく夢のある物語が描かれていたから。しかし、未来を好きになってスヒョンは自分の想いが最低で汚いものだと知っていく。

「未来、どうしたの?」

高校三年生の梅雨、スヒョンが部室に入ると、誰もいない暗い部室で未来は一人で泣いていた。今日は部活が休みの日のため、誰もこれからやって来ないのが幸いである。

「僕でよかったら、話を聞くよ?」

スヒョンが未来の目を見つめ、優しく言うと未来は「あのね……」とこぼれていく涙を拭いながら口を開く。

「ずっと前から病気がちだった犬のメルが……メルが……死んだって……。お母さんから連絡が来て、でも、信じたくなくて……」
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