運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
綾乃を抱きしめたまま、大きな手で背中をさすりながら、悟は話を聞いてくれている。
「何を食べても・・・おいしくなくて・・・」
「うん。」
「味がしなくて。」
「うん。」
「でも・・・」
「ん?」
ひと言ひと言にちゃんと相槌を打ちながら聴いてくれる悟の、つくりだす雰囲気が、空気が綾乃には心地よい。
「お腹すいた・・・」
綾乃の言葉に悟はふっと笑った。

「ここに来て正解だな。そんな綾乃にぴったりの今夜はクラムチャウダーだ。薄井綾乃特別メニューなんだ。」
「え?」
「綾乃を想って、綾乃のためだけに作った特別メニュー。」
少し体を離した悟が綾乃を見下ろして微笑む。
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