運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「どうぞ」
綾乃の手に木のスプーンを渡す悟。
隣の椅子に座り、微笑みながら綾乃を見つめている。

「なんか・・・」
「ん?」
「食べる前から・・・あったかい・・・」

おかえりと自分を迎えてくれた悟。
誰かにおかえりと言ってもらうのは久しぶりだ。

自分のために、誰かが作ってくれた温かなスープから立ち上がる湯気を眺めるのも。

一度止まりかけた涙が再びあふれる。

「ちゃんと・・・食べたいのに・・・止まらない・・・」
ごしごしと手で涙を拭う綾乃。
悟はその手をギュッと握り、「乱暴にこするなよ」と笑いながら近くに置いてあったナプキンで、綾乃の涙を拭った。
< 108 / 349 >

この作品をシェア

pagetop