運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
この夜、二人は時間を忘れていろいろな話をした。

綾乃は哲史とのことも、両親のことも、何一つ隠すことなく悟に話をした。
自分の中にあるどろどろとした感情も。
ありのままに話した。

自分は大人になりきれていない。だから、誰かの幸せを心から祝福することがいまだにできずにいることを話すと悟は「バカだな」と綾乃の頭をポンと撫でた。

どろどろとした感情を誰かに話すのは初めてで、緊張していた綾乃。
悟に幻滅されても距離をとられても仕方ないと思っていた。

でも、実際は意外な反応だった。

「どろどろした感情なんて誰だってもってるだろ。生きてるんだから。それが人間だ。俺だったらぶんなぐってるかもな。相手のやつ。そいつの嫌いな食材いれまくった料理食べさせるかもな。」
真剣な顔で言う悟に、綾乃はそれまで誰にも言えずにしまいこんでいた感情が、ふっと薄らぐことを感じる。
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