運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
気持ちを伝えてくれた悟。
なのに、まだ自分は過去にとらわれて結局、臆病に気持ちをしまい込みそうになっている。

今は言葉にして伝える勇気がわかない。
ただ、伸ばされた手をつかむことしかできない。



温かく幸せな時間を過ごしたはずなのに。

すぐ隣に、陽だまりのような存在の悟がいるのに。


まだ鏡の中の自分を見つめると、悲しみに打ちひしがれて必死に前に進んでいる自分が見える。
完全には変われていないのは、あまりにも長い時間を一緒に過ごした哲史との思い出から抜け出せていないからだ。

そして、あたたかいと思っていた思い出は、現実には嘘で囲われた世界で、綾乃はただ一人その囲われた世界から今だに抜け出すことができていない。
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