運命が変えた一夜 ～年上シェフの甘い溺愛～

「体調は？」
「今日は耳鳴りがひどくて」
綾乃の耳は一向に良くならない。

妊娠が分かった翌日に産婦人科を受診して、漢方薬を処方してもらった。
いろいろと精神的にバランスが崩れている時期の綾乃は突発性難聴の症状も悪化していた。

「帰ったら少しマッサージしようか」
「お願いします。」
「ははっ任せなさい。」
耳が聞こえないことで力が入っている体は、悟のマッサージでほぐされると少し楽になる。
悟は妊娠期間でもできるマッサージまで勉強していた。

「おっと」
綾乃の体がまっすぐ歩くことができないくらいに、疲れ切って耳の症状も今日は特にひどいことを悟は察して、車までの短い距離も綾乃の腰に手をまわして支える。
「ありがとう」
という綾乃の顔も疲れが滲み出ている。