運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「落ちるから、手、まわして」
悟の言葉に、綾乃は遠慮しながら首に手を回す。

近付いた悟の体からはトマトソースの香りがした。


レストランの料理みたいに・・・温かい・・・


綾乃は今になって急にあふれ出した自分の涙に気づいた。

なんでだろう・・・あの日・・・元カレに別れを告げられてどん底にいた日は涙は我慢できた。

両親を失った時も涙は我慢できた。

いつだって涙を我慢することができた。泣かないようにコントロールすることができた。
なのに・・・あの日、レストランで料理を食べた時もそうだった。
我慢できなかった。

そして今も・・・なぜか涙を我慢できない。感情をコントロールできない。
< 29 / 349 >

この作品をシェア

pagetop