運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「鍋はまた買えばいい」
「・・・」
「でも、この前のアヒージョ、おいしかったよな」
悟の話に綾乃が頷く。

大丈夫。

自分の声はしっかりと綾乃に届いていると悟は実感できて、少しほっとした。

「思い出も詰まってるものが壊れるのは悲しいよな。」
「・・・」
もう一度頷く綾乃。

「それに突然壊れたからびっくりしたよな。」
この話し方は心療内科の医師から教えてもらった対応方だった。

話を聞くこと。
でも綾乃の場合は話を自分から口にできなくなることが大半だ。
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