運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「恥ずかしくなんてないじゃん。どこが恥ずかしいんだよ。」
「恥ずかしいですよ。いい大人の女が・・・本当に・・・」
うつむいたままの綾乃の手を悟はまだ握っている。

「あの日も、そこの奥の席で俺の作ったスープのみながら泣いてた。」
悟の言葉に思わず顔をあげる。
見上げた顔は、すべてを包み込むような微笑みを浮かべていた。

「うれしかったなー。誰かの心に響くような料理が作れたのかもしれないって。」
「・・・おいしかったですもん。あったかかったし。」
つい感動を思い出して身を乗り出す綾乃に、悟は笑う。

「大人になると、簡単に笑えるだろ?嘘でも、表面だけでも。でも涙は流せない。簡単には。その涙を流してくれてるんだ。どこが恥ずかしいんだよ。俺はうれしさ以外に何も思わないけどな。あっ、心配もあるか。」
どこまでも綾乃を包み込む穏やかな微笑み。
悟に握られている手が熱く感じる。

久しぶりに感じるぬくもりだからじゃない。
心まで温まるのはきっと、悟だからだ。
この人だからだと綾乃は気づいていた。
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