運命が変えた一夜　～年上シェフの甘い溺愛～
「あの日の涙から、俺ずっと気になってたんだ。変な意味じゃなくて。」
悟が綾乃の方を見る。

「その日以来ほとんど毎週金曜に食べに来てくれてるだろ？かなり頑張って仕事を片付けてきてくれてるんだろうなって思ってた。いつもギリギリな表情して店に入ってきてさ、俺の料理を食べた後は全然違う表情するんだ。」
微笑みながらそう話す悟。

頭一つ分は背の高い悟の顔を見上げながら綾乃はまっすぐに悟の瞳を見た。
その優しさで満ちる瞳に吸い込まれそうになる。

「この子はきっと頑張り屋で、自分のキャパ以上にがんばっちゃう子なんだろうなって思いながら見てた。力の抜き方、わかんないんだろうなって。俺の料理でその肩の力抜いてやりたいなーって思ってた。」
悟は幼い子供の頭を撫でるように綾乃の頭に手を置いた。
そしてポンポンと撫でる。

「腹が減ったら俺のところに来い。いつでもいいからさ。待ってるから。」
「・・・はい」
悟はいくつなんだろうか。この余裕のあるすべてを包み込むような雰囲気。
綾乃は思わずうなずいていた。この人の前では素直になれる。

自然と力が抜けて、ありのままの自分でいられるような気がした。
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