春の雨に濡れて
第5話 二人で学校に転校の相談に行った
【3月7日(月)】
月曜日に出勤して総務部へ扶養家族について相談の電話を入れる。
「知人が交通事故で死亡したが、その子供を引き取って世話する場合、扶養家族にできるかを知りたいのですが」
「その知人と言うのは親族ですか姻族ですか」
「いえ、血縁関係はありませんし、私は独身ですので姻族でもありません」
「扶養家族は、親族か姻族に限られますのでできませんね」
「それなら、健康保険もダメですね」
「そうです」
「ありがとうございます」
隣の席の山本君がどうしたんですかと聞いてくるので、知人の娘を預かることになりそうなので、その当たりのことを調査していると答える。
「先週、18歳以下とか、聞いていましたが、そのことと関係があるのですか」
「総務部との電話のとおりだけど、その子とは何もないが、行き掛かり上、面倒を見ることになりそうで、どうしたものかと考えているところなんだ」
「結婚すれば、配偶者として扶養家族にできますよ。結婚していなくても内縁関係でもよいことになっているはずです」
「17歳の高校生と結婚するわけにはいかないだろう。まして内縁関係などと申請すると淫行条例で逮捕されてしまうよ」
「16歳以上なら、親の承諾があれば結婚できますよ」
「そんなに簡単にはいかないのであれこれ調べているんだ」
山本君は2年後輩だが、入社した時からいろいろ面倒を見てやっており、仲が良く、時々飲みにも行っている。信頼のおける人物だが、このことは厳重に口留めしておいた。結論からいうと、結婚しない限り、扶養家族にはできないことが分かった。
扶養家族にできないとすると、健康保険は国民健康保険に加入させればよい。そのためには、今、健康保険はどうなっているのかを、叔母の会社に電話して直接叔母さんに聞くことにした。
会社に電話すると、迷惑そうに電話に出てきたが、美香の健康保険について尋ねると叔母の扶養家族として健康保険に入っていることが分かったので、申請を取り下げてもらい、関係書類を会社の自分宛てに送ってくれるように依頼した。書類が届けば、国民健康保険を申請できる。
帰宅すると、美香ちゃんが玄関まで「お帰りなさい」と跳んでくる。いままで誰もいない部屋に帰るのが、日常だったから、なんとなく嬉しい。それも、可愛い女の子が迎えてくれて。
「食事の用意できていますけど」
「ありがとう。お腹がすいたので、すぐに食べたい」
寝室で部屋着に着替えてリビングへ
「今日は炊き込みごはんにしてみました。私も食べたかったので」
「いろいろ作れるんだ」
「お金がかからない献立です。余り物でできますから」
「おいしい。お代わりある」
「あります。おいしいと言ってもらえて嬉しいです」
それから、美香ちゃんの叔母さんに電話して保険のことを聞いたことなどを話した。関係書類が届いたら、一日休暇を取るから、一緒に区役所に行って、住民票の移動や健康保険の手続きをすることを提案した。
それから、通っていた高校について聞くと足立区にある都立高校と言うので、高校へ行って転校ができるか相談することも提案した。美香ちゃんは同意した。
健康保険の関係書類は週末に会社に届いた。書類に目をとおしたが、生年月日は、1999年6月18日になっている。今、17歳だから、今年の6月には18歳になる。18歳になったら考えるとか言っていたが、あと3か月しかないことが分かった。
来週の火曜日に休暇を取ることにして、区役所への手続きと学校の訪問を実行することにした。
【3月13日(日)】
日曜日の午後3時に美香ちゃんの荷物が届いた。勉強机に椅子、小さな書棚、あと段ボール箱5個、プラケース1個に布団。
「叔母さんは、持ち物全部を送ってくれたみたい。よかった」
「身の回りのものが届いてよかったね」
「私はやっかいものだったから」
「交通事故の保険金があったんじゃないの」
「数百万円はあったはずだけど、叔母夫婦が使ってしまったみたい」
「それはひどい話だ」
「高校の授業料や教材費などは出してくれたけど、お小遣いなどはくれなかった」
「諦めるしかないか」
「諦めています」
【3月14日(月)】
月曜日に、美香ちゃんから聞いた高校へ電話して、担任の山崎先生と明日の11時に会う約束ができた。女の先生で、美香ちゃんのことをとても心配していていろいろ聞かれたが、重要な話なので、その時にお話しすることにした。
【3月15日(火)】
火曜日の朝、美香ちゃんは二人分の弁当を作った。美香ちゃんは送られてきた高校の制服に着替えていた。9時に出発。
足立区役所で転出の手続きを済ませる。生徒手帳と印鑑が必要だったが、持ってきていた。転出証明書の内容を見ると、本籍も記載されていたが、本籍は両親と以前住んでいた住所とのこと。本籍は当面このままで問題ないはず。叔母の養女にもなっていなかった。そのあと高校へ移動。
11時少し前に学校に到着した。今日が3月15日だから3月1日以来、2週間ぶりの学校で美香ちゃんはなつかしそうに入っていった。職員室で担任の山崎先生に声をかけると、先生は、二人を応接室へ案内してくれた。
それからしばらくするともう一人年配の男の先生が入ってきた。副校長で二人で話を聞くとのことだった。名刺交換をしてから、美香ちゃんにこれまでのことを話すように促した。
美香ちゃんは、両親が事故で無くなってから、叔母さん夫婦に引き取られたこと、叔母さんお家での生活のこと、叔父さんとのこと、それがもとで叔母さんの家から家出したことなどを順序を追って淡々と話した。話をしているとき、美香ちゃんは涙ぐんでいたが、最後まで泣かなかった。
山崎先生は、突然に学校を休んだので叔母さんへ電話したが、大喧嘩して家出したけれども、そのうちに戻ってくると聞かされていた。いつまでも登校しないので、とても心配していたと言った。
それからのことは、僕から駅で出会って家へ連れ帰ったこと、叔母さん夫婦に同居の許可を貰ったこと、転出届をしてきたことなどを、同居の承諾書や転出証明書を見せながら説明した。
山崎先生は、自分もかつて同じ境遇だったと話した。ただ、私は幸い子供のいない叔母夫婦に、大切に育ててもらったと話した。
「私は、美香さんとは全くの他人です。雨の日に偶然、家に泊めてあげただけです。ただ、私も美香さんや山埼先生と同じ境遇で祖父母に育てられました。妹がいたのですが、両親とともに亡くなっています。それで、美香さんの話を聞いて、他人事ではないような気がしまして、差し出がましくこのようなことになりました」
「事情は良く分かりました。でも、山田さんは17歳の未成年です。独身男性と同居されるのはいかがなものでしょうか?」
「副校長の心配はごもっともです。淫行条例も知っています。自分は保護者として美香さんを同居させるつもりです。みだらなことは一切していませんし、今後もそのようなことはないとお約束できます」
「これは私の方からお願いしたことです。最初は断られましたが、家に帰れない事情を話して受け入れてもらいました」
「私は担任として、山田さんの希望どおりにしたら、良いと思います」
「叔母さんから承諾を受けていますし、叔父さんとのこともあるので、同居は認めるにしても、山田さんの学業は、これからどうしますか」
「そのことをご相談に伺った次第です。学費は私で負担しますが、今住んでいるところが、大田区の長原というところで、ここまで通学するのはかなり大変です。転校などは可能ですか」
「試験の成績にもよりますが、事情があれば、不可能ではないです」
「手続きを調べてみますが、山田さんはここ2週間欠席していて、3学期の期末試験を受けていませんので、追試験を受けてもらわなければなりませんが、できますか」
「大丈夫です。追試験を受けさせてください」
「今週の木曜、金曜の2日間でできるように各課目の先生にお願いしてみます。後で試験の時間割を電話でお知らせします」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。それから、今回の件は美香さんのために、内密にしておいていただけますか」
「分かっています。山田さんに迷惑のかからないように配慮します」
学校の帰り、近くの公園で美香ちゃんが作ってくれたお弁当を食べながら、2人で話をした。
「学校に二人で説明にきてよかったね。なんとか事情を分かってくれて同居も認めてくれたみたいだ。転校もできるかもしれない」
「山崎先生でよかった。同じ境遇とは知らなかったわ」
「追試験は大丈夫?」
「教科書が届いたので、帰ってから復習します」
「転校できるといいけど、できなければ通学時間が長くなるけど、今の学校で良いじゃないか。話の分かる先生方がいるから」
「近くの方が、家事が十分できるから良いけど」
「その心配は無用だ。近くだと、クラブ活動もできるし、転校できるといいね」
「できれば心機一転新しい学校へ行きたいです」
それから、電車に乗って、長原の近くの大田区役所の出張所へ転入の届出をして、叔母さんから送られてきた保険組合の書類を添えて、美香ちゃんの国民健康保険加入の手続きをした。これで病気になっても大丈夫と安心した。
それから、家に帰ると美香ちゃんは、ノートを出して追試験の勉強を始めた。がんばれ!
【3月17日(木)18日(金)】
美香ちゃんは、木曜と金曜にお弁当を作って、学校に追試験を受けに行った。学校で友達に会えていろいろな話をして楽しかったけれど、休んだ理由や同居のことなどは、一切話さなかったとのこと。
山崎先生は、気が付かないで、つらいときに相談に乗って上げられずに、ごめんねと謝っていたという。そして、転校はできるだけ頑張ってみると言ってくれたそうだ。転校がだめだったら、ちょっと時間がかかるけど、通学したら良いといったら、美香ちゃんはその時はお願いしますと安心したようだった。
【3月19日(土)、20日(月)春分の日、21日(火)代休】
期末試験の追試験が終わって、諸手続きも一段落したので、3連休は、これからの二人の生活に必要なもののショッピングに出かけた。調理に必要な器具を2~3点、食器も買い足した。
それから、もっと年頃の女の子のような服装にさせたいので、渋谷の若い子向けのショップへ連れていって、気に入った服などを数点買った。
美香ちゃんは遠慮していたが、同居するとこれから一緒に出掛けることもあるので、それ相応の服を着てもらわないと恥ずかしいというと、買うことを承諾したが、本当に嬉しそうだった。喜んでくれると買ったかいがある。
それから、表参道の有名なヘアサロンを予約して、女子高生だけど可愛い髪形にしてほしいと頼んだところ、さすがに有名店、ショートカットで知性的な美少女に仕上げた。化粧をしていないが、素顔でも十分にきれいだ。こんなにきれいな子だったのかと見直した。
本人も、自分の変身に驚いたみたいだ。ヘヤサロンが一番嬉しかったと見えて、上機嫌だった。そして、ありがとうと何度も何度も言っていた。喜ぶのを見るとこちらも本当にうれしい、これが生きがいになりそうだと言ったらあきれていた。
月曜日に出勤して総務部へ扶養家族について相談の電話を入れる。
「知人が交通事故で死亡したが、その子供を引き取って世話する場合、扶養家族にできるかを知りたいのですが」
「その知人と言うのは親族ですか姻族ですか」
「いえ、血縁関係はありませんし、私は独身ですので姻族でもありません」
「扶養家族は、親族か姻族に限られますのでできませんね」
「それなら、健康保険もダメですね」
「そうです」
「ありがとうございます」
隣の席の山本君がどうしたんですかと聞いてくるので、知人の娘を預かることになりそうなので、その当たりのことを調査していると答える。
「先週、18歳以下とか、聞いていましたが、そのことと関係があるのですか」
「総務部との電話のとおりだけど、その子とは何もないが、行き掛かり上、面倒を見ることになりそうで、どうしたものかと考えているところなんだ」
「結婚すれば、配偶者として扶養家族にできますよ。結婚していなくても内縁関係でもよいことになっているはずです」
「17歳の高校生と結婚するわけにはいかないだろう。まして内縁関係などと申請すると淫行条例で逮捕されてしまうよ」
「16歳以上なら、親の承諾があれば結婚できますよ」
「そんなに簡単にはいかないのであれこれ調べているんだ」
山本君は2年後輩だが、入社した時からいろいろ面倒を見てやっており、仲が良く、時々飲みにも行っている。信頼のおける人物だが、このことは厳重に口留めしておいた。結論からいうと、結婚しない限り、扶養家族にはできないことが分かった。
扶養家族にできないとすると、健康保険は国民健康保険に加入させればよい。そのためには、今、健康保険はどうなっているのかを、叔母の会社に電話して直接叔母さんに聞くことにした。
会社に電話すると、迷惑そうに電話に出てきたが、美香の健康保険について尋ねると叔母の扶養家族として健康保険に入っていることが分かったので、申請を取り下げてもらい、関係書類を会社の自分宛てに送ってくれるように依頼した。書類が届けば、国民健康保険を申請できる。
帰宅すると、美香ちゃんが玄関まで「お帰りなさい」と跳んでくる。いままで誰もいない部屋に帰るのが、日常だったから、なんとなく嬉しい。それも、可愛い女の子が迎えてくれて。
「食事の用意できていますけど」
「ありがとう。お腹がすいたので、すぐに食べたい」
寝室で部屋着に着替えてリビングへ
「今日は炊き込みごはんにしてみました。私も食べたかったので」
「いろいろ作れるんだ」
「お金がかからない献立です。余り物でできますから」
「おいしい。お代わりある」
「あります。おいしいと言ってもらえて嬉しいです」
それから、美香ちゃんの叔母さんに電話して保険のことを聞いたことなどを話した。関係書類が届いたら、一日休暇を取るから、一緒に区役所に行って、住民票の移動や健康保険の手続きをすることを提案した。
それから、通っていた高校について聞くと足立区にある都立高校と言うので、高校へ行って転校ができるか相談することも提案した。美香ちゃんは同意した。
健康保険の関係書類は週末に会社に届いた。書類に目をとおしたが、生年月日は、1999年6月18日になっている。今、17歳だから、今年の6月には18歳になる。18歳になったら考えるとか言っていたが、あと3か月しかないことが分かった。
来週の火曜日に休暇を取ることにして、区役所への手続きと学校の訪問を実行することにした。
【3月13日(日)】
日曜日の午後3時に美香ちゃんの荷物が届いた。勉強机に椅子、小さな書棚、あと段ボール箱5個、プラケース1個に布団。
「叔母さんは、持ち物全部を送ってくれたみたい。よかった」
「身の回りのものが届いてよかったね」
「私はやっかいものだったから」
「交通事故の保険金があったんじゃないの」
「数百万円はあったはずだけど、叔母夫婦が使ってしまったみたい」
「それはひどい話だ」
「高校の授業料や教材費などは出してくれたけど、お小遣いなどはくれなかった」
「諦めるしかないか」
「諦めています」
【3月14日(月)】
月曜日に、美香ちゃんから聞いた高校へ電話して、担任の山崎先生と明日の11時に会う約束ができた。女の先生で、美香ちゃんのことをとても心配していていろいろ聞かれたが、重要な話なので、その時にお話しすることにした。
【3月15日(火)】
火曜日の朝、美香ちゃんは二人分の弁当を作った。美香ちゃんは送られてきた高校の制服に着替えていた。9時に出発。
足立区役所で転出の手続きを済ませる。生徒手帳と印鑑が必要だったが、持ってきていた。転出証明書の内容を見ると、本籍も記載されていたが、本籍は両親と以前住んでいた住所とのこと。本籍は当面このままで問題ないはず。叔母の養女にもなっていなかった。そのあと高校へ移動。
11時少し前に学校に到着した。今日が3月15日だから3月1日以来、2週間ぶりの学校で美香ちゃんはなつかしそうに入っていった。職員室で担任の山崎先生に声をかけると、先生は、二人を応接室へ案内してくれた。
それからしばらくするともう一人年配の男の先生が入ってきた。副校長で二人で話を聞くとのことだった。名刺交換をしてから、美香ちゃんにこれまでのことを話すように促した。
美香ちゃんは、両親が事故で無くなってから、叔母さん夫婦に引き取られたこと、叔母さんお家での生活のこと、叔父さんとのこと、それがもとで叔母さんの家から家出したことなどを順序を追って淡々と話した。話をしているとき、美香ちゃんは涙ぐんでいたが、最後まで泣かなかった。
山崎先生は、突然に学校を休んだので叔母さんへ電話したが、大喧嘩して家出したけれども、そのうちに戻ってくると聞かされていた。いつまでも登校しないので、とても心配していたと言った。
それからのことは、僕から駅で出会って家へ連れ帰ったこと、叔母さん夫婦に同居の許可を貰ったこと、転出届をしてきたことなどを、同居の承諾書や転出証明書を見せながら説明した。
山崎先生は、自分もかつて同じ境遇だったと話した。ただ、私は幸い子供のいない叔母夫婦に、大切に育ててもらったと話した。
「私は、美香さんとは全くの他人です。雨の日に偶然、家に泊めてあげただけです。ただ、私も美香さんや山埼先生と同じ境遇で祖父母に育てられました。妹がいたのですが、両親とともに亡くなっています。それで、美香さんの話を聞いて、他人事ではないような気がしまして、差し出がましくこのようなことになりました」
「事情は良く分かりました。でも、山田さんは17歳の未成年です。独身男性と同居されるのはいかがなものでしょうか?」
「副校長の心配はごもっともです。淫行条例も知っています。自分は保護者として美香さんを同居させるつもりです。みだらなことは一切していませんし、今後もそのようなことはないとお約束できます」
「これは私の方からお願いしたことです。最初は断られましたが、家に帰れない事情を話して受け入れてもらいました」
「私は担任として、山田さんの希望どおりにしたら、良いと思います」
「叔母さんから承諾を受けていますし、叔父さんとのこともあるので、同居は認めるにしても、山田さんの学業は、これからどうしますか」
「そのことをご相談に伺った次第です。学費は私で負担しますが、今住んでいるところが、大田区の長原というところで、ここまで通学するのはかなり大変です。転校などは可能ですか」
「試験の成績にもよりますが、事情があれば、不可能ではないです」
「手続きを調べてみますが、山田さんはここ2週間欠席していて、3学期の期末試験を受けていませんので、追試験を受けてもらわなければなりませんが、できますか」
「大丈夫です。追試験を受けさせてください」
「今週の木曜、金曜の2日間でできるように各課目の先生にお願いしてみます。後で試験の時間割を電話でお知らせします」
「ありがとうございます。それではよろしくお願いします。それから、今回の件は美香さんのために、内密にしておいていただけますか」
「分かっています。山田さんに迷惑のかからないように配慮します」
学校の帰り、近くの公園で美香ちゃんが作ってくれたお弁当を食べながら、2人で話をした。
「学校に二人で説明にきてよかったね。なんとか事情を分かってくれて同居も認めてくれたみたいだ。転校もできるかもしれない」
「山崎先生でよかった。同じ境遇とは知らなかったわ」
「追試験は大丈夫?」
「教科書が届いたので、帰ってから復習します」
「転校できるといいけど、できなければ通学時間が長くなるけど、今の学校で良いじゃないか。話の分かる先生方がいるから」
「近くの方が、家事が十分できるから良いけど」
「その心配は無用だ。近くだと、クラブ活動もできるし、転校できるといいね」
「できれば心機一転新しい学校へ行きたいです」
それから、電車に乗って、長原の近くの大田区役所の出張所へ転入の届出をして、叔母さんから送られてきた保険組合の書類を添えて、美香ちゃんの国民健康保険加入の手続きをした。これで病気になっても大丈夫と安心した。
それから、家に帰ると美香ちゃんは、ノートを出して追試験の勉強を始めた。がんばれ!
【3月17日(木)18日(金)】
美香ちゃんは、木曜と金曜にお弁当を作って、学校に追試験を受けに行った。学校で友達に会えていろいろな話をして楽しかったけれど、休んだ理由や同居のことなどは、一切話さなかったとのこと。
山崎先生は、気が付かないで、つらいときに相談に乗って上げられずに、ごめんねと謝っていたという。そして、転校はできるだけ頑張ってみると言ってくれたそうだ。転校がだめだったら、ちょっと時間がかかるけど、通学したら良いといったら、美香ちゃんはその時はお願いしますと安心したようだった。
【3月19日(土)、20日(月)春分の日、21日(火)代休】
期末試験の追試験が終わって、諸手続きも一段落したので、3連休は、これからの二人の生活に必要なもののショッピングに出かけた。調理に必要な器具を2~3点、食器も買い足した。
それから、もっと年頃の女の子のような服装にさせたいので、渋谷の若い子向けのショップへ連れていって、気に入った服などを数点買った。
美香ちゃんは遠慮していたが、同居するとこれから一緒に出掛けることもあるので、それ相応の服を着てもらわないと恥ずかしいというと、買うことを承諾したが、本当に嬉しそうだった。喜んでくれると買ったかいがある。
それから、表参道の有名なヘアサロンを予約して、女子高生だけど可愛い髪形にしてほしいと頼んだところ、さすがに有名店、ショートカットで知性的な美少女に仕上げた。化粧をしていないが、素顔でも十分にきれいだ。こんなにきれいな子だったのかと見直した。
本人も、自分の変身に驚いたみたいだ。ヘヤサロンが一番嬉しかったと見えて、上機嫌だった。そして、ありがとうと何度も何度も言っていた。喜ぶのを見るとこちらも本当にうれしい、これが生きがいになりそうだと言ったらあきれていた。