さあ、有象無象
誠司にわかるように誠司の文章の一つを僕の創作に引用した。
誠司は知らないふりをしていたけれど気付いていただろう。わかるように書いたからね、きみは頭がいい。「まだ未公開小説なんだ、みっくんに一番に見せたくて」と無邪気に笑っていた誠司の顔が青ざめた日のなんて清々しかったことか。
ゆっくり壊して行こうと思う。少しずつ搾取して行こうと思う。お前の可能性は僕が一番にわかっているんだ。だから浮上するのはやめておくれ。頼んだよ誠司。やさしい誠司は僕を咎めないのを知っているから彼は崩壊していく。信じているものに裏切られる時の気持ちって生きたまま十二指腸を口から引き摺り出されるより気分が悪いんだよ、その内案の定誠司は笑わなくなり僕とは会話をしなくなりそして徐々に壊れていく。
いよいよアンチコメントが浮上した。誠司だろう。構わない。そうだ、最近二年生で「名誉会」だとかいう賢い鬼才と女子高生が組んだ相談室があるんだそうだ。的を射ているだとかなんだとかクラスの連中が言っていたな。
「誰にも揺るがされない自分でいるというのは、とても至難の業なんだよ」
越前 創は気付いていた模様だ。僕の猟奇性を。僕が誠司に追い詰められて5階から落ちる演出もこれは誠司の未公開小説のオマージュだったのだけれど、笑いが込み上げて堪らなかったよ。驚いたな、斜陽に向かって笑っていたのを越前に見られたときは。あの男は確かに危険だ…今後関わることはないだろう。
誠司。誠司、聞いたよ。きみ、僕を追い詰めるあまり気が触れておかしくなったそうだね。ヴァイオリンもピアノも弾けないね、残念だ。小説以外なら何で飛躍しようが構わなかったのに。サイトは潰れたらしいね。僕を認めなかった罰だ。このウスノロマヌケどもが。
全治二ヶ月のこの怪我が治る頃、誠司は学校にはいないだろう。僕がうんとうんと壊してあげたから。誠司。先に仕掛けたのはきみだ。小学生の頃、平社員の父と専業主婦の母を持ったごく平凡な僕の才能を鼓舞したのはきみだ。だから、最期まで付き合ってくれ。責任は負ってもらう。この日記は書いたら燃やすよ。紙を食べてもいいね。窒息死するかなぁ。まぁいいか。
誠司、きみの類稀なる文才は、僕への復讐に燃えもう誰の目にも止まらないね。
誠司。誠司。