愛しても、いいですか
火曜日ぶりに見る大石さん。
心なしかちょっと痩せた気がする。
ちゃんとご飯、食べてるんだろうか。

ロビーのソファーに腰掛けていた慎太郎も立ち上がってお疲れ様です、と挨拶する。
私の隣にいる慎太郎を視界に入れた途端、微笑んでいた大石さんの目が急にすっ、と細くなって、2人が一瞬無言で見つめ合う。

でもそれはほんの一瞬で、次の瞬間にはお疲れ様、とさっき私に見せた笑顔とは別の種類の笑顔を見せて、役員階直通のエレベーターの方へ向かって行った。

「…沙耶香んとこの副社長、ほんとイイ男だよな。俺一瞬見惚れちゃったわ」

そう言って苦笑いする慎太郎に、はは、と曖昧な笑顔を返しておいた。

「今日店予約してるんだけど、そこでいい?」

「え、うん、もちろん。慎太郎もそういうこと出来るようになったんだね」

と揶揄い口調でそう言えば、

「…うるせ」

と頭を小突かれた。照れた時の慎太郎の癖だ。懐かしい。
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